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「ワタシクリエイト」が生まれるまで  井尾さわこインタビュー・上

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emorvで2016年からスタートしている「ワタシクリエイト」の講座。
日々の暮らしを豊かにする知識やモノづくりを楽しみながら心を豊かにするワークショップと、「生き方」「働き方」といった切り口から自分の内面を見つめ直す対話の場の二軸から、自分自身を源として世界を創ろうとする人、自身にエンパワーメントされた人を育むプログラムだ。


 この春からは、その二軸をさらに統合し、ワークショップそのものを「対話の場」「自分を取り戻す場」としてデザインできるよう、ワークショップ講師やコミュニティ運営側のメンバーを対象とした探求の場、講座よりはもう少しゆるっとしたサークルのようなコミュニティラボとしてして展開いくとのこと。「ワタシクリエイト」の背景にあるものについて、主宰の井尾さわこさん(以下さわこさん)にお話を伺った。

「ワタシクリエイト」の原体験


「ワタシクリエイト」の源は、さわこさんの原体験にはじまる。美術大学を卒業後、希望していたデザインの世界に飛び込んださわこさん。しかし、初めて勤めた制作会社の仕事は想い描いていたものとは少し違うものだった。

デザイン制作会社はメーカーの要望に従ってデザインを起こす。物が生まれて世に出ていく過程を川に例えるならば、下流に近いところの仕事といえるかもしれない。
「そういう仕事をしてみて、自分がものづくりの『そもそも』の川上に近い部分から一緒に創り出したい人間だということが分かったんです。「無い」ところから、こういうのつくりませんか?と提案したり、理念やコンセプトという見えないデザインを自分もクリエイトしたいんだ、と」


また、女性ならではの葛藤もあった。
「ある日、打ち合わせに行くことになって張り切って準備していたら『隣で笑ってあいずち打っててくれればいいから』と言われちゃった。自分の意志や努力に関わらず、どこに行っても〈女の子要員〉として見られちゃうんだな、と痛感した。時代もあったと思いますけどね。」
 自分の努力なんかじゃ変えられない社会のヒエラルキーを体感したと。

こうしたずれはどこから来てしまうのだろうか。さわこさんは、自分が「デザイン」という表層的な言葉につながって仕事を選択してしまっていたことに気がづいた。何者として、誰と一緒に、何を生み出したいか。そんな問いを抱いて、さわこさんは結局3年でその会社を卒業する事を決める。


その時に心に誓ったのが「自分の生き方は自分でクリエイトできるはず!」

という思いが後のワタシクリエイトのコンセプトとなったという。

「今ある幸せに気づく」場



 

資質にも機会にも十分恵まれ、それに見合ったアウトカムも十分受け取っているはずの人が、それを「幸せ」として実感していない。そしてその不全感を外側の世界に転嫁し、「社会を変えたい」と言う。今いる場所から回避したくて、第三の場を求める。その言葉や行動には一見勢いがあるように見えるが、その勢いは結局どこにも行かず、何もつくり出さない。


 

必要なのは、新しい何かを与える場だけではなく、「今十分に足りていて幸せだということに気づく場」だ、とさわこさんは考えた。では、どうしたら人は、自分の幸せに気づくことができるだろう?





 さわこさんは、自分の体験を振り返った。わたしが幸せを感じるのって、どんな時だろう?
「それで思い出したのは、自分が本当に望んでいたものに出会ったり、それに没頭している時のワクワクした気持ちです。ただ楽しくて夢中になっている時って、すごく満たされている。幸せってその感覚だなって思ったんです。ああ、外に求めなくても自分の中にすでにもうあるじゃん!って気づけたらいいんだ、と。」

しかし、その「ワクワクを感じること」すら阻まれてしまうことがある、とさわこさんは言う。

「本当に自分が望むものに気づくまでには、悲しみとか怒りとか、あんまり見たくない感情と直面したりする。そこを回避して、『一見ワクワクしそうなもの』に飛びつくことってあると思うんです。でもそれだと結局同じことの繰り返し。新しい情報ばかりを追い求めて消費し続けるジプシー状態。だから、自分が自分の気持ちに気づいて、そのまま感じていられるような、そして、それを見守るメンバーがいる場が必要だと思いました。外と内の境界線が曖昧で透明度の高い、所属意識も無いけれど、何かあった時に拠り所になっているセイフティネット的なコミュニティ。それが私の考えるワタシクリエイトコミュニティのあり方だと気がついたんです。エモーヴ自体もコミュニティ型の会社にしていきたいと思って。」



表面上はうまく行っているように見えながら、内面には不全感と深い葛藤を抱える…それは、「本当はこうしたいのに!」という思いを抱きながら「女の子要員」として扱われ続けたさわこさん自身とも重なる。

「そういう、本来のワタシを生きることができないでいる人に出会うと、わたしは本当に悲しいんです。声を出してないほうのもう一人のワタシは、泣いてるんじゃないかな、って思うから。」

 

いつのまにか分断してしまっていたふたつの「ワタシ」を、「今ある幸せに気づく」というプロセスを通じて統合する。そして、統合した自分自身を源に、ひとりひとりの幸せから半径3メートルの幸せへ、そして社会をより良くしていく。さわこさんが「ワタシクリエイト」を通じて創ろうとしているのは、そんな世界だ。へ続く。。。

つかさ

つかさ について

ファシリテーター・ライター

中央大学卒業後、官公庁勤務を経て、10年間公立小中学校で教員として働く。子どもの幸せは周りの大人の幸せと密接につながっている、との気づきから、2013年、産後ケアの啓発に取り組むNPO法人マドレボニータに転職。豊かな関係性の中で女性の肯定感を育む産後ケアのあり方をテーマに調査研究を行っている。個人活動として、共感的な場の中で自分らしさを表現する「短歌の会」の開催や、自分自身を源として世界を創る起業家へのインタビューや事業レポートの執筆等を行っている。